塔ノ岳・丹沢表尾根

火曜日に高校の友達と山に登ってきた。もしかすると誰かの役に立つかもしれないので、少し詳しく書いてみる。山に登らない人にとっては全くどうでも良いが、一応。


8:30、神奈中バス・大倉バス停到着。登山開始。大倉尾根に入る。蒸し暑い。何と言うか、体に絡みつくような暑さ。
丹沢は、山塊全体で見るとたらいを伏せたような形をしており、登り始めてすぐに急登がある。ついでに相模湾からの湿った南東の風が常時吹き付けるため、ひたすら霧がかかって前が見えなくなっていることが多い。その日も当初は曇りがちで、生い茂る木々のたくましさと相まって、若干神秘的な雰囲気出してるよね、いのちって凄いよね、みたいな話をしたら「まぁそうやね」的な返事が返ってきた。


9:00、見晴小屋着。以降、駒止小屋まで一本調子の登り。ややオーバーペース気味。一緒に登った相手が高校のワンゲル部の元主将だからか。道の所々は荒廃しており、丸太で補修がなされている。雲と木の隙間から日光が差し込み、木の葉に乱反射して燦然と輝いていた。


天神尾根分岐を過ぎた辺りで疲労が体に現れ始める。どういう理由か知らないが、凄まじい量の汗が蛇口を捻ったように絶え間なく吹き出す。いや、冗談抜きで。滲むのではなく、飛び散るイメージ。あるいは、蛆虫が全身を這うような感覚。それでいて、臍の下辺りから野蛮な力が充溢する錯覚にとらわれる。むしろ消耗しているのに。1.5Lの水筒はまもなく空になった、と言うことにしておく。


11:30、塔ノ岳山頂到着。登り始めの頃にあった雲がほとんど全て無くなっている。何物をも視界を遮らず、富士山まで見える。下界の町並みは既に網膜の限界を突破し、ほの暗い膜の様にしか見えない。あそこに人がわんさか住んでいて、自分もその一味かと思うと感慨深い。ムスカみたいな感じ。


何より驚いたのが、空がとても青かったこと。夏空の色を「断末魔の人の瞳が映す至純の青空を、あの此世ならぬ青を」とあっさり表現してしまう三島由紀夫はやはり不世出の天才だったのだけれど、実際過剰に青い空は、いかがわしいというか、不気味なものをそこに読み込みたくなる衝動に駆られる。普通に晴れているくらいがちょうど良いのだ。



何となく興味本位で仰向けになって寝ていたら、見る見る顔が赤くなってひどい眩暈を起こした。単なる馬鹿。


帰りは表尾根を使った。クサリが多く、やや危ない。鹿の食害のせいか、立ち枯れた木が多く崩壊箇所(もちろん補修済み)がいくつかある。尾根が切れ落ちている行者ヶ岳の前後が最も要注意。三ノ塔直下の急登は、道が荒れているだけで特に問題はない。


16:30、下山。1ヶ月ぶりに登ると少し疲れた。…ただ、これから先に控えている予定を考えれば、歩程7時間くらいは余裕でクリアしておくべきだった。反省。真夏ならアルプス登ったほうが楽だけど、丹沢も悪くない。感想はそんな感じ。