新宿三丁目歩行者天国

ふとしたきっかけで民主党参議院議員の「政治」活動に参加してみることにした。ちなみに今年の夏に改選を迎える人間である。


靖国通り沿いの雑居ビルの3階と4階に立候補予定者の「事務所」はあった。天井の低い、がらんとした倉庫には何本ものノボリとアンプが無造作にしまいこまれている。本棚には、民主党自民党両党の発行する選挙活動の手引き、白書などの政府系刊行物、平成19年度一般予算特別予算の分厚い冊子などが並び、演説のネタには困らないようだった。


といっても、自分が主に手伝ったのは、いわば本人の政治活動の前座とも言うべき部分だった。新宿三丁目歩行者天国の一角をやや強引に占拠し、学生中心にパフォーマンスを繰り広げるとか言うイベント。昼の二時過ぎに現地に到着して、隅っこのほうで1時間ほどずっと旗を持ちつつ、他の人間がパントマイムやジャグリングなどをするのを眺めていた。


正直どのように民主党議員とジャグリングが関係しているのかは分からなかった。しかし目立っていたことは確かだった。やたら音量の大きなマイク、耳を貫くハウリング、なぜかほぼ全員が着ているオレンジT。向かいの三越マツモトキヨシからクレームが来たのは端から見ていて分かった。…何はともあれ目立つことは悪いことではない。目立たない政治的活動なんか、始めからやらないほうがマシだろう。様々な有権者の集まる東京選挙区では、ともかくも知名度が投票行動に圧倒的な影響を及ぼすことは余りにも当然で、わざわざ自分が日記に書くほどのことでもないからだ。


少々かったるかったので旗を持ちながらメールをポチポチ打っていると強面の男(区議会議員)が現れて真顔で怒ってきた。まぁ当たり前と言えば当たり前か。学生たちの持つ、拭い難い「ヌルさ」は彼らのような「大人」にとっては厄介なものと映ったかもしれない。


イベントの後はアルタ前に場所を移して演説会。蓮舫の司会の下、どこからとも無く集まってきた地方議員が次々と街宣車の屋根に登り、自分の宣伝と議員の応援演説をしていた。演説自体に特に見るべきものは無かったが、このまま何もせず旗を持ったままで終わるのはもったいなかったので、その辺にスタンバイしていた区議会議員に話しかけてみることにした。


「先ほど鈴木先生が『多摩地区に医者が足りない』とおっしゃっていましたが、状況はそんなに深刻なんですか?」
「そうだねーみんなやっぱ東京志向、都心志向だから…。割を食ってるのは東京郊外、さっきも言ったように埼玉、千葉、茨城、そして多摩地区。人口比で医者が足りな過ぎる」
「解決法はあるんですか?」
「そうだねーいくつか案はあるんだけど…例えば地方大学の医学部生につき、地元就職の場合学費を相当額免除する、あるいは医師の給与体系に『地域手当』を組み込むとか。企業がその土地その土地の物価に考慮して給与を決めているようにね。色々知恵を絞ってるトコなんだよね。。」


説明は的を射た明瞭なものだった。それを日記で再現できないのが悔しい。
…医師や弁護士、公認会計士といった人々は、国によってその業務を独占する資格を与えられてはいるが、どこでどのような仕事をするかはある程度当人の裁量に任されている。そこに地方、郊外での医師不足の原因がある。…だからといって法律で働く場所を制限するのは馬鹿げた話。戦前の日本じゃあるまいし。


結局のところ、「医療の地域間格差」解消のためにとりうる手段は「地方で働くと儲かる」という「インセンティブ刺激」パターンか、「たとえ儲からなくとも、地方で働けばやりがいが得られる。地域医療に力を尽くしたい」という「モチベーション刺激」パターンのどちらかだろうが、よくわかんない事が余りにも多いので今度調べてみようと思った。今から学校。