マンガ喫茶

何を血迷ったか、ちょうど今、福島駅前のマンガ喫茶の個室にいる。大阪環状線ではない。ここ一週間、自分の寮で一人おとなしく寝たのは2日しかなく、それ以外はあちこちで迷惑をかけつつふらふら生活していた。それほど卑下することはないのだけれど。


それはそうと、先週の金曜日、男三人で丹沢山に登ってきた。前日の終電で小田急渋沢駅に着き、近くのファミレスで仮眠を取り、3時30分に出発した。
辺りはまだ真っ暗で、登山道から夜景が見えたのには笑った。自分たちは、まるで姨捨てのリハーサルをする村人のようだった。しばらくすると空が明るんできて、表尾根のいかつい山並みがくっきりと姿を現してきた。アルプスっぽくない?とか言っていると、見る見るうちに周りはガスに覆われて視界が閉ざされ、ついでに雪が降ってきた。東京で遅い初雪が降ったこの日、丹沢ではむしろ吹雪いていた。


意外なことに、最も美しかったのは「樹」だった。すっかり葉を落とした夥しい数の樹木の、その一本一本の枝全てに丁寧に雪が付着し、遠くから眺めるとまるで枯れない桜のようだった。子供のころに見た吉野の山桜のような、とても上品で、少し白々しい光景だった。強く揺さぶると元の枯れ木に戻ってしまうところが、ちょっと寂しくて面白かった。


塔ノ岳、丹沢山のピークを踏んだが、周りが白すぎてそれほど実感は沸かなかった。途中ほとんど寝ながら歩いていたので記憶すらあやふやなのだ。体温が下がると眠くなる、というのはあながち嘘ではない。とにかくいたずらに寒く、初めの山小屋では甘酒を飲み、次の小屋ではホットコーヒーを振舞ってもらった。どちらの小屋番も一様に変わった男で、しかしいい奴だった。文句(もしくは下ネタ)を言いつつ学生に沢山の行動食をくれたりする。蛭が岳に着く頃には雪はやみ、眼下で雲がぐるぐる渦巻いていた。山頂でカロリーメイト食って、大声を出して、ダッシュで下山してさっさと寝た。いまいち話に脈絡がないが、あまり気にしないでおく。明日からいよいよ免許合宿。