サンデージャポン

相当久しぶりに駒場の授業が再開された。いつものようにぼんやりと授業を聞き、3,4限は図書館でぼんやりした後、5限の国際政治の授業が始まった。教授は藤原帰一と言うわりかし有名なおっさんだった。
藤原の本(「デモクラシーの帝国」だったか)はかつて高校の頃に読んだことがある。例えばインデペンデンス・デイやらの映画を引き合いにアメリカの単独行動主義を舌鋒鋭く批判するような、何と言うか著作の端々にうかがい知れる深い教養と洞察力に、やや下世話とすら感じられる扇情的な語り口がマッチした怪書だった。
それで授業を受けてみようと思ったのだけれど、やっぱり面白い人だった。やけに大量にリストアップされた参考書の紹介に1時間余りを費やし、単なる「闘争」と「協調」の二元論に収まりきらない国際政治のリアリズムを把握することの重要さを滔々と説いている内に段々テンションが上がってきて、ついには日本の日曜朝にやってる各種討論番組に文句を付け始めた。彼の中ではサンデージャポンサンデープロジェクトもひとしなみに「サンデーなんとか」として一括りに出来るらしかった。エリートがTVに代表されるマスメディアを臆面無く小馬鹿にする事はよくある話であり、その意味では藤原帰一も同じく学者先生に他ならなかった。 テレビの討論番組で国際問題を扱う場合、予め「識者」の立ち位置ははっきりしている。タカ派ハト派に分かれることが普通だ。靖国北朝鮮イラク、全部そう。白熱してるように見えて当然議論はかみ合わない。視聴者もそれを承知でテレビに向かう。このおっさんは、こうした白々とした予定調和、丁々発止の思考停止に苛立ちを隠せないでいた。
鋭く対立しているように見える日本のタカ派ハト派が、実はどちらも大勢順応主義に過ぎない(右はアメリカのタカ派の、左は世界の反米勢力の尻馬に乗っている)とすれば、藤原のような立場は単純にエリート主義と言える。新聞でもテレビでも、何でもいいから登場して、口さがない喋りで「時代閉塞の現状」を変えるために頑張って欲しいと思った。苛立っているだけでは多分何も変わらないだろう。